「かわや」は「廁」か「厠」か

2024.2

 以前トイレを扱った記事で、「廁」と「厠」が混在していたことがありました。
 とくに使い分けということでもなさそうでしたので、校正者としては「どちらかにソロエル」という疑問出しをするところですが、どちらに揃えるのが建設的な提案になるのか、少し考えてみました。

 漢字の問題なので、まずは、漢和辞典を調べてみようと思い、手元の小型辞書を見てみました。
  新字源 改訂新版 (角川書店)
   親字=廁 厠(俗字)
  漢語新辞典 (大修館)
   親字=廁 厠(俗字)
  新明解漢和辞典 (三省堂)
   親字=廁 厠は記載なし
  漢字源 (学研)
   親字=廁 厠(異体字)
  現代漢語例解辞典 (小学館)
   親字=廁 厠(異体字)
 これらを見ると、親字(正字)は、「廁」とするのが一般的な考え方といえそうです。
 その中で、少し変わっていたのが新潮社の「新潮日本語漢字辞典」でした。
  新潮日本語漢字辞典 (新潮社)
   親字=厠 廁(正字)
 これは、正字としては「廁」だが、代表的な漢字(親字)は「厠」であるということだと思います。

 この違いはどこにあるのでしょうか。
 一般的に漢和辞典は、漢文を読むための辞典と考えられています。それに対して「新潮日本語漢字辞典」は、日本語のための漢字辞典を標榜しているそうです。そこに何らかの違いがあるのではないかと思いました。

 そこで、国語辞典ではどうなっているのか、確かめてみることにしました。
  広辞苑 (岩波書店)
   厠 圊
  辞林21 (三省堂)
   厠
  岩波国語辞典 (岩波書店)
   厠
  新明解国語辞典 (三省堂)
   厠
  新潮現代国語辞典 (新潮社)
   厠 圊
  明鏡国語辞典 (大修館)
   厠

 そこでわかったのは、国語辞典ではすべて「厠」であり、「廁」を掲げているものは見つからなかったということです。

 まとめて言えば、漢文の中で使われる正字は「廁」だが、日本語の漢字としては「厠」が一般的である、ということだと思います。
 漢字といえばまず漢和辞典に当たる、ということは間違いではないと思いますが、日本語の漢字としてどうなのかを考える際には、国語辞典も確かめてみる必要がある、ということを学んだ一件でした。

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